2020
10.21

兼業・副業の問題点

PMP News Letter* https://www.pmp.co.jp/pmpnews/ では先月厚生労働省から発表された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」や、通達「副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第38条第1項の解釈等について」(基発0910第3号 令2.9.1)を踏まえて、兼業を行う際の実務上の注意事項を解説しています。

そもそも厚生労働省がなぜ促進するのでしょうか?

厚生労働省は“オープンイノベーションや起業の手段として有効であり、都市部の人材を地方で活用する地方創生にも資する”から促進すると言っています。

統計をみれば、兼業の第一の目的は収入を増やす事です。平成29年度の就業構造基本調査によれば非正規社員が兼業する割合は正社員の2.5倍、実際年収300万円未満の層の兼業者が最も多いとの事。今回、新型コロナがさらに後押しをしました。残業の圧縮、非正規社員を中心として所定労働日や所定労働時間の短縮による収入減を補うため、兼業をせざるを得ません。

厚生労働省はこのような現実を直視せず、きれいごとで兼業の促進を進めようとしているように思えます。現実から目をそらした対応策など役には立ちません。

まず、労働時間の通算の考え方は改めるべきです。労働時間の通算は労働基準法第38条の解釈通達基発第769号(昭23.05.14)の考え方に基づいています。昭和23年の通達を今でも通用させ続けようとしています。

このため、通算して法定労働時間を超過した残業は、何れかの企業に残業支払いの責任が課される事になります、PMP News Letterで詳しく説明していますが、兼業を許可したため、兼業していなければ不要だった割増賃金の追加支払いの義務を企業が背負う事態もあり得ます。

テレワークの定着に伴い、フレックスタイム、特にコアタイムのないスーパーフレックスの導入が広がりました。フレックスタイムの社員が兼業する場合の労働時間の通算についての明快な回答は未だありません。やりようによっては、自社と兼業先から残業代を二重取りすることもできそうです。

もっとも労働時間の通算には、実際は兼業者からの申告によるものとされています。厚生労働省によれば「労働者からの申告等がなかった場合には労働時間の通算は要せず」とまでの見解を公式に表明しています。ずいぶんといい加減ですね。

さらに厚生労働省は健康管理には労働時間の通算という考え方は適用しないとしています。昭和23年の通達には健康管理は含まれていないからでしょうか? 実は健康管理こそ、兼業する場合の最重要課題であるように僕は思いますが・・・

健康管理の点で言えば、行政は法の枠組みでしか問題をとらえていないため、兼業の際の自社から兼業先までの移動時間(これは労働時間ではありません)や、兼業先の終業時刻と翌日の自社の始業時刻との間のインターバル時間の長短についてなど何の言及もありませとん。

健康管理とは、要は十分な休息がとることができるかという問題につきるはずです。労働基準法の労働時間しか見ずに、休息時間を把握しようとはしていません。これでは本当の健康管理はできません。兼業する労働者の健康を守ることはできません。

厚生労働省の兼業促進のガイドラインには、ウーバーイーツは触れられていません。個人事業主として業務を受託する人は、厚生労働省が取り上げる兼業者ではありません!ウーバーイーツは雇用される労働者ではないため、労働基準法や労働安全衛生法の対象ではないからです。当然厚生労働省のガイドラインからは外れてしまいます。では、国民の健康と安全はいったいどこが守ってくれるのでしょうか?

今回の個人ブログでは、行政批判に終始してしまい、建設的な提言に結び付かないもどかしさを感じています。一方で、行政の対応は真実から目を背け、嘘で固めたきれいごとで兼業をとらえた上で、促進しようとしているとしか思えず、やりきれなくなります。自民党政権奪取後400万人の雇用を増やしたという安倍前首相の成果に対して、半分近くは収入の低い非正規社員ではないかと言う野党のクレームを受けての兼業促進策でしょうか?

本来であれば兼業・副業は、正社員であっても時間的に余裕がある雇用条件のもとで、自らの付加価値を高めるために活用すべきものだと考えています。行政の言うきれいごとで進めるべきものでしょう。
今の兼業の実態が低収入、残業が減った非正規社員のとりあえずの収入増の手段であれば、非正規の低収入層こそが、教育研修などにより自らの付加価値を高め、より労働生産性が高く高収入が約束される職種への転換を促すような対策をとるべきではないかとも思います。

* 注:筆者の拠点PMPのHPに掲載のPMP News Letterは兼業・副業について、その1からその5(完結)を発信しています。

是非こちらにもアクセスしてください。

以 上

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慶應大学経済学部を卒業(専攻は経済政策、恩師はカトカンで有名な加藤寛教授)。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入社し、人事企画部門他を経験。その後、米国ケミカル銀行(現JPモルガン・チェース銀行)の日本支店の副社長として銀行と証券人事部門を統括。米国マイクロソフト社の日本法人であるマイクロソフト株式会社の人事部門と総務部門の統括責任者を経て、PMPを創業。外国企業と日本企業双方に、グローバルな視点から人事労務のコンサルティング活動を行っている。
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