2020
10.30

Work from Home (在宅勤務)の生産性

2020年初めから始まった在宅勤務 – Work from Home – は日本ばかりでなく欧米も含めた壮大な規模の実験と言えます。欧米での在宅勤務の分析結果をいくつかご紹介します。自社でコロナ禍から緊急導入した在宅勤務の今後を検討する際の参考となればうれしい限りです。

導入直後、多くの経営者は在宅勤務の移行により生産性は低下する事を覚悟していました。コロナ感染の拡大防止の観点では、多少の犠牲も甘受すべきという決意だったようです。しかしながら、米国ハーバー大学の最新の調査結果では「生産性は以前と変わらない」と、経営者が心配するような事態とはならなかったようです。詳しく見ると、在宅勤務開始直後は、生産性は急激に低下し、仕事の満足度もかなりのダメージを被ったようです。しかしながら在宅勤務開始後、2か月程度を経過するようになると生産性は一気に回復したという調査結果を示しています。在宅勤務という新しい働き方に慣れるまでそれなりの時間を要したという事のようです。日本の在宅勤務の満足度のアンケート結果を見ても、若年層の満足度が高く、対照的に高年齢層ほど在宅勤務を不便と考える人数が増える傾向にあります。在宅勤務という新しい働き方に素早く慣れる柔軟性は若い人ほど高いという事なのでしょう。

さらに同大学の調査では、在宅勤務により仕事の集中力が高まったという傾向もあるようです。別の調査ですが、例えば週1回はミーティングをやめ各自が自分の仕事に集中できる日を設けることで、さらに集中できる環境を整えようとする試みもあるとの事。
在宅勤務開始後2~3か月で自分なりに効率性の良い一日の仕事の流れがわかってきたという報告もあります。仕事の流れの個別事例には、人によっては途中で中抜けをして散歩をするような行動も含まれていました。出社して働く時の就業規則で定められた画一的な就労形態とは一線を画するようです。在宅勤務のおかげで家族との時間を多くとることができるようになったという声もありました。

興味深いのは、社内会議の件数は増えたが、会議時間は短縮されたという報告です。調査では、在宅勤務導入後、1時間を超える社内会議は11%減ったものの、30分以下の会議は22% 増えたという結果が示されています。また従来からの定例の会議は在宅勤務の導入で改めて見直され減少する傾向にあるようです。結果として、会議は必要に応じて都度開催されるという仕組みに変化しているようです。在宅勤務の中で効率的に情報を共有するための新しい会議のあり方にも思えます。

出社して皆が同じ場所に集まって雑談などをする事による情報の共有がもたらす効能は、よく聞かれます。これを理由として在宅勤務を否定的にとらえる人も少なくありません。PMPのクライアントの中には在宅勤務による雑談機会の喪失を真正面からとらえて、在宅勤務者に毎日3時から10分以上の文字通りの雑談タイムを設けるとした事例がありました。これも、良い試みだと思います。
雑談タイムと同じ発想でしょうか、米国ではソーシャルミーティングと名付けられた新しい会議が生まれています。仕事とは直接関係のない事を楽しくおしゃべりする場のようです。オンライン昼食会や、パジャマの日(筆者注:ハラスメントにならないように注意しましょう)、ペットの日というように、その時々にテーマを設けて開くという工夫もあるようです。因みにPMPでは皆が集まっておしゃべりする時間帯を“大喜利タイム”と名付けましたが、日本語には“井戸端会議”というズバリ適切な表現のあったことを思い出しました。各社それぞれの工夫を凝らしたネーミングにより、社員同士の意思疎通の機会を作るのはいかがですか。

強く心が引かれたのは在宅勤務導入後のマネージャーの行動変化です。1日の時間のかなりの時間を部下一人一人とのコミュニケーションに充てなくてはならなくなったという調査結果です。一方で、マネージャーが長い時間をミーティングに費やす部下ほど、生産性が高いという報告もあります。新しい人事考課体系としてOne on Oneが注目を浴びていますが、在宅勤務者の効率性を考える際に、改めてOne on Oneについても是非検討してください。
気になるのは在宅勤務のしわ寄せがマネージャーに来ているのかもしれないという点です。人事は、マネージャーから詳しく事情を聴き、マネージャーの負荷を効率的に軽減する方策も考える時機なのかもしれません。

以 上

経団連傘下の神奈川県経営者協会主催による、『withコロナ時代におけるこれからの労務管理のポイント 』というテーマのオンデマンド動画が配信中です。
以下の動画で概要をご紹介しています。是非ご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=XANFuFlixfc

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慶應大学経済学部を卒業(専攻は経済政策、恩師はカトカンで有名な加藤寛教授)。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入社し、人事企画部門他を経験。その後、米国ケミカル銀行(現JPモルガン・チェース銀行)の日本支店の副社長として銀行と証券人事部門を統括。米国マイクロソフト社の日本法人であるマイクロソフト株式会社の人事部門と総務部門の統括責任者を経て、PMPを創業。外国企業と日本企業双方に、グローバルな視点から人事労務のコンサルティング活動を行っている。
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