2020
10.01

持てはやされるジョブ型雇用への苦言

新型コロナウイルスを契機にテレワークに代表される新しい働き方を導入され、コロナ後もそれらの新しい働き方をある程度は継続しようという傾向が観察されます。
これまでの働き方が見直されている。失われた30年どころかそれ以前から続く、今やガラパゴス化した日本固有の働き方を見直そうとするのは大変結構なことだと思う。

そんな動きの一つにこれまでのメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への切り替えというものがあります。代表は富士通。報道を見ると社長トップダウンの決定のようですね。社長就任直前の赴任地ロンドンで、「海外ではジョブ型が当たり前」と発見。「全世界の富士通13万人を統一するためにも日本をジョブ型に切り替える」との記事がありました。

PMPは創業26年。顧問先の半数がジョブ型雇用の外国企業です。
ジョブ型雇用という概念すら日本以外の外国にはありません。ジョブ型雇用という言葉を英訳しても外国人には通用しません。海外では採用の際、担当する職務=JOBを遂行できる事が条件であり、わざわざジョブ型などと断る必要はありません。ジョブ型以外の雇用などはあり得ません。

もっとも日本でもジョブ型雇用は別に珍しいものではないと言えます。
中途採用は最初から応募職種への即戦力を求めるジョブ型雇用であり、新卒採用が少ない中小企業ではジョブ型雇用が当たり前でした。中小企業経営者からすれば、何をいまさら・・・という思いなのではないでしょうか。

とはいえ、今のジョブ型雇用ムードには警鐘を鳴らしておきたい。
そもそも、ジョブ型雇用の前提は職務別採用であり、職務記述書(以下JDと略す)を予め作成し、JDで定められた要件、具体的には、その職務を遂行する技術・専門知識・能力を備えているかを、面接や筆記試験で確認をします。
注:JDが当たり前の海外では、長らくJDの限界も議論されている。
またかつての高度経済成長期、Japan as No.1時代には、海外では新しい仕事を頼むと自分のJDには書かれていないと拒否する。何でもチャレンジする日本の社員とは大きな違いだと、JD批判をしていたが・・・

さて大企業の新卒採用。
本当にジョブ型雇用が可能ですか? 学生は特定職務の即戦力になり得ますか? 大学は企業で即戦力となる学生を養成していますか? 
注:余談ですが、筆者自身は、日本の大学教育はLiberal Artsを深化させてほしいと考えています。

これまで同一の金額であった新卒初任給を、職務に応じていくつかパターンに分ける企業まで出現していますが、新卒初任給の複線化などは即戦力となり得る特定の技術系以外には適応しきれないと予想します。

筆者のお勧めは、新卒入社5年、できれば3年後に、ジョブ型雇用を導入するというものです。
企業は3-5年を教育研修期間として、その間に全員をそれぞれ特定のジョブの専門家にまで育成します。この時点で、雇用契約書を書き換えます。新しい雇用契約書には、重要な労働条件の一つの“従事する業務”は、一人一人の特定の職務が記載されることになります。
それ以降の昇格昇進、配置転換はこの“従事する業務“を前提として決定されることになります。会社の大きな方向転換で、ある社員の”従事する業務“を含む部門が縮小されたり、廃止されたりすると、社員は退職勧奨という事態に遭遇することもあるかもしれません。もっとも、その専門性を活かして転職も容易になるでしょうが・・・

以 上

経団連傘下の神奈川県経営者協会主催による、『withコロナ時代におけるこれからの労務管理のポイント 』というテーマのオンデマンド動画配信がスタートしました。
以下の動画で概要をご紹介しています。是非ご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=XANFuFlixfc

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慶應大学経済学部を卒業(専攻は経済政策、恩師はカトカンで有名な加藤寛教授)。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入社し、人事企画部門他を経験。その後、米国ケミカル銀行(現JPモルガン・チェース銀行)の日本支店の副社長として銀行と証券人事部門を統括。米国マイクロソフト社の日本法人であるマイクロソフト株式会社の人事部門と総務部門の統括責任者を経て、PMPを創業。外国企業と日本企業双方に、グローバルな視点から人事労務のコンサルティング活動を行っている。
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