2021
11.01

無期転換申込権が高齢者活用の妨げになる!? – PMP News(10月19日付)『有期雇用者の無期転換を振り返って』 関連

PMP News(10月19日付)『有期雇用者の無期転換を振り返って

2018年4月から、通算雇用期間5年を超える有期雇用者には、無期転換申込権が発生しています。この制度を活用して、雇用期間の定めのある有期雇用から雇用期間の定めのない無期雇用に契約を変更する事例も多くみられるようになりました。

無期転換と定年の問題
(有期雇用)契約社員は、雇用期間の定めがあり、契約を更新せず解消すること(いわゆる雇止め)が可能である事に加えて、職務内容や就労の場所を限定したり、正社員に比較すれば短期の雇用が想定されている事から、有期契約社員の定年を定めない就業規則は珍しくありませんでした。
それどころか、その人の特別なスキルや人脈などを考慮して特別な役割を担ってもらうために正社員ではなく契約社員という便利なスキームを利用して、例えば大手企業の60歳前後のベテラン社員を、比較的好条件の契約社員として採用する中堅企業はこれまでも散見されました。
大手企業では60歳以降の社員は定年後の嘱託扱いで処遇を引き下げる事から、彼らを中堅企業がもう少し良い労働条件で受け入れ活用する事は、企業と社員双方にとってWIN・WINの関係にもなるとも考えていました。

今、彼らの“無期転換”問題に頭を悩ます事例がよく見られるようになりました。

ご存じの通り、定年後再雇用者については特例措置を済ませておけば、通算雇用期間5年を超えても無期転換の申込権は生じません。
注意して頂きたいのが契約社員の場合です。
定年後再雇用制度は定年制度が当然の前提ですが、契約社員就業規則に定年の定めがない場合、60歳を超えても契約社員の契約を結ぶことはできますが、定年ではないため、正社員に適用する無期転換の特例措置の対象とはなりません。
したがって、通算雇用期間5年を超えると無期転換申込権が発生します。

筆者は特殊スキル等を持つ高年齢の契約社員を採用する事例では、5年経過後ただちに無期転換するケースは少ない印象を持っています。しかしながらご注意いただきたいのは、いったん発生した無期転換申込権を契約社員はいつでも行使できる点です。無期転換の申し込みを受けた使用者はこれを拒むことはできず、その有期雇用期限が到来したら直ちに無期契約に切り替えなければなりません。

無期雇用の際の労働条件は、特段の定めのない限りは有期雇用契約の労働条件と同一の労働条件(労働契約法第18条)とされており、雇用期間が有期から無期に変わるだけでそれ以外の労働条件はそのまま引き継がれます。
有期雇用であれば、雇用期限到来に合わせて雇用契約書の更新時に、業務内容、報酬、労働日や労働時間などを見直すことが可能であるため、高年齢者の契約社員の場合も、その人のスキルや会社の事情を勘案して弾力的な対応ができますが、無期となれば、契約の更新もないためそのような新しい労働条件の交渉を行う機会を改めて設定しなければなりません。また労働条件の見直しも、実際は厳しい時も出てくるだろうことは容易に想像されます。

労契法改正による無期転換開始以降、有期契約社員就業規則にも定年を定める企業は珍しくありません。また無期転換した契約社員用に特別に就業規則を作成する場合、そこに定年を設ける事例もあります。結果として、無期転換の仕組みさえなければ、65歳とか70歳と言う年齢に縛られず弾力的にその人の特別なスキルや専門性を活用しようとしていた企業は、5年たてば無期転換するリスクから、そこにも定年制を設けCompliance対応せざるを得なくなっています。

特別なスキルや専門性を以って企業に迎えられる高年齢者はそれほど多くは無いのかもしれませんが、法改正により彼らの活用の場が狭められてしまいました。
割り切って済まされる問題だとは思いません。

以    上

有期雇用者の無期転換を振り返って

 

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鈴木雅一(すずきまさかず)

代表取締役・特定社会保険労務士ピー・エム・ピー株式会社
慶應大学経済学部を卒業(専攻は経済政策、恩師はカトカンで有名な加藤寛教授)。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入社し、人事企画部門他を経験。その後、米国ケミカル銀行(現JPモルガン・チェース銀行)の日本支店の副社長として銀行と証券人事部門を統括。米国マイクロソフト社の日本法人であるマイクロソフト株式会社の人事部門と総務部門の統括責任者を経て、PMPを創業。外国企業と日本企業双方に、グローバルな視点から人事労務のコンサルティング活動を行っている。