2020
12.17

1割以上の企業が賃金カット!!??

先月11月下旬の事でしたが、テレビ等マスコミが一斉に、「コロナ禍が原因か、1割以上の企業が賃金カットをしているという発表が厚生労働省からありました。」との報道。覚えている諸氏も多いはず。
話題になった厚生労働省のデータは以下のようなものです。
確かに「賃金カットを実施、又は予定している企業」の令和2年の企業割合が10.9%になっています。
ではマスコミの分析である、①原因はコロナ禍 ②1割もの多くの企業が 賃金カットを実施、コロナによる景気の悪化は深刻なのでしょうか?

そうかもしれません。またそうでないかもしれません。
筆者はマスコミ報道を肯定も否定もしません。正しく言えば、肯定も否定もできません。
上記「第5表 企業規模、賃金カットの対象企業別企業割合」は厚生労働省が毎年実施している 賃金引上げ等の実態に関する調査の報告書に掲載されているものです。
厚生労働省の定期調査であり、質問の仕方は「令和2年中に賃金カットを実施し又は予定していますか?」というものです。賃金カット実施済あるいは実施予定と回答した企業も、それが直接新型コロナウイルスの影響によるものであるかという、今回限りの質問は一切行われていません。
厚生労働省の本調査の担当者からも「コロナと関連付けて不安をあおるマスコミの姿勢」に対しては疑問視するとの声も直接聞いています。

同じ厚生労働省の調査の付表を掲載しますので、ぜひご参照ください。

今年の10.9%という数字は、昨年6.0%、一昨年6.1%となっているため、悪化していると言えそうですが、過去15年の企業割合をみると、リーマンショック後、東北の震災後の賃金カット企業数割合はさらにヒドイ数字を示しています。
また、今回のコロナでは特に3月、4月にかけて多くの企業が休業を実施しました。雇用調整助成金の特例扱いにより、この間企業は休業手当の支給負担が大幅に軽減(中小企業は実質負担ゼロ)されました。要は、この間は休業手当という賃金負担が大幅に軽減された事になります。あるいは企業の中には、休業手当は賃金ではないとして、休業中は賃金支給を0と計上し、休業補償という別の勘定科目で処理している可能性もあります。雇用調整助成金の支給手続きでは、賃金とは別に休業手当を支給したことを行政に証明することが求められていました。

最後に、厚生労働省の担当者の言を紹介します。「この調査は毎年定期的に行うもので、今回の調査結果と新型コロナウイルスとの関係については一切わかりません。」

以 上

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鈴木雅一(すずきまさかず)

代表取締役・特定社会保険労務士ピー・エム・ピー株式会社
慶應大学経済学部を卒業(専攻は経済政策、恩師はカトカンで有名な加藤寛教授)。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入社し、人事企画部門他を経験。その後、米国ケミカル銀行(現JPモルガン・チェース銀行)の日本支店の副社長として銀行と証券人事部門を統括。米国マイクロソフト社の日本法人であるマイクロソフト株式会社の人事部門と総務部門の統括責任者を経て、PMPを創業。外国企業と日本企業双方に、グローバルな視点から人事労務のコンサルティング活動を行っている。