2022
11.15

Postコロナの日本人の働き方??

コロナ禍に緊急避難措置として導入を余儀なくされたテレワーク。欧米ではPostコロナでも、新しい働き方として定着しており、今や優秀な社員を採用するためにはテレワークの導入が必須であるとも言われています。同時に、出社し、同じオフィススペースで上司や同僚と一緒に働くことのメリットも認識した上で、Postコロナではテレワークを主としつつ、週1~2回から月1回程度の範囲で出社を奨励するというテレワーク+出社のHybrid型の就労スタイルが主流となっています。

日本のテレワークはどうなっているでしょうか?

下図グラフは厚生労働省のテレワークポータルサイトにある『企業におけるテレワーク導入状況の推移』(出典:総務省「通信利用動向調査」(平成25年〜令和4年)となっています。コメントしては「テレワークを導入している企業の推移です。令和に入り新型コロナウイルス感染症拡大防止対策のひとつとして、テレワークの導入が拡大しました。」と結ばれています。これを見る限りコロナを契機として日本でも欧米と同様、テレワークが急激に拡大しているかの印象を受けます。

今回、内閣府や経産省、国交省のテレワーク関連の情報発信をチェックしました(何故、複数の省庁が同じようなテーマで、かつ調査主体も方法も差がある事から数値にも差がある結果を発信しているのでしょうか???)が、数値に差があるものの概して、日本はテレワークが拡大しているかの論調が多いように思います。

本当にそうでしょうか?

筆者の実感では、2020年のコロナ禍の緊急事態宣言直後、感染予防のため可能な仕事は極力テレワークとする頃がテレワークのピーク。コロナ落ち着くにつれ、出社が目立つようになったと感じています。コロナ前ですが、PMPがオフィスを置く行政幹部との打合せに出席した際に、行政側のトップの方が、「私もついに在宅勤務(当時はテレワークと言う用語は定着していませんでした)を1日経験しました」と1年間のうちの1日の在宅勤務経験について熱心に語られていました。

筆者も大変お世話になっている日本生産性本部では、「働く人の意識」定点調査の一環でテレワークについても丁寧な調査を行っています。こちらの調査結果の方が筆者の実感と比べて違和感がありません。以下ご紹介いたします。日本生産性本部によるテレワーク実施率の調査結果です。

2020年5月、ちょうど最初の緊急事態宣言の頃のテレワーク実施率は31.5%です。これがピークです。
対面が必須の業務もある為、全ての産業でテレワークが導入できるものでもありません。
一方で、中小企業では色々な制約からテレワークが導入できない事情もあるはずですから、3割から4割程度が今の日本のテレワークの限界のようにも思えます。
さらに日本生産性本部では従業員規模別のテレワークの実施率の推移も同じ期間にわたって継続的に調査をしています。テレワークの実施率が従業員規模で左右されるのも納得ができるところですが、2020年から2022年の1001人以上の大企業の推移を見ると、2020年はテレワーク実施率50%と際立って高いものの、テレワークの継続が可能であるにもかかわらずPostコロナでは大企業は一転して社員に対する出社要請に転じるという傾向となっているのかもしれません。
その下は日本生産性本部の定点調査の調査委対象です。この調査は雇用者のテレワーク実感、それだからこそ筆者の感覚に合致しているのでしょう。

最後にご紹介するのは、この低下傾向にあるテレワークに対する社員の満足度です。2020年緊急事態宣言もありコロナ禍のあってのテレワークワークの緊急導入に戸惑った社員の方々のテレワーク満足度・満足にどちらかと言えば満足の合計はほぼ8割。
同様に、今後もテレワークの継続を望む社員の割合もかなり高いと言えます。
今テレワークが低落傾向にあるらしいと言う事を改めて考えてみませんか?

ご参考までに、厚生労働省のテレワークポータルサイトでは、アメリカ・ヨーロッパのテレワークの状況についてそれぞれ以下の通り示されています。

                    出典:成長戦略会議 2021.2.17資料

                       出典:Eurofound「Living, working and COVID-19 data」

以    上

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鈴木雅一(すずきまさかず)

代表取締役・特定社会保険労務士ピー・エム・ピー株式会社
慶應大学経済学部を卒業(専攻は経済政策、恩師はカトカンで有名な加藤寛教授)。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入社し、人事企画部門他を経験。その後、米国ケミカル銀行(現JPモルガン・チェース銀行)の日本支店の副社長として銀行と証券人事部門を統括。米国マイクロソフト社の日本法人であるマイクロソフト株式会社の人事部門と総務部門の統括責任者を経て、PMPを創業。外国企業と日本企業双方に、グローバルな視点から人事労務のコンサルティング活動を行っている。