2020
02.28

派遣社員のテレワークが進まないのは!!

久しぶりの個人ブログです。
鈴木が率いるPMPのHPをご参照ください。PMP HPには新型コロナウイルス関連等々のNews Letterが頻繁に発信されています。申し訳ない事ですが、こちらの方に忙殺されていました。

さて、新型コロナウイルスの対応策として政府は各企業にテレワークを推奨しています。PMPでは随分前から在宅勤務制度は導入済でしたので、今回はこれを徹底する措置をとっています。各社でも、業態から導入可能な企業はとりわけ今週2月25日ごろから一斉にテレワークへの切り替えに踏み切りました。
ここで問題なのはそういう企業でお仕事をされている派遣社員です。
マスコミでは、正社員にはテレワークを認めた会社がそこで働く派遣社員にはテレワークを認めない事を取り上げ正社員と差別するのか!?という報道をしていますが、問題はそのような単純な非正規労働者の差別問題ではありません。日本の派遣法は、ヨーロッパ各国と比べると冗長と思われるほど細部までがんじがらめの縛りがあり、派遣社員に対して正社員と同様にテレワークを許したくても簡単にはできない仕組みになっています。

まず派遣社員は派遣先企業の社員ではありません。正確に言えば派遣会社の社員が派遣会社と派遣先企業との派遣契約に基づき派遣されている“労働力”です。
したがって、派遣契約によれば、派遣先でテレワークを導入しても派遣先が直接雇用していない派遣社員に勝手にテレワークを許すことはできません。
派遣社員がテレワークを行うためには、まず派遣先各企業と派遣社員の雇い主である派遣会社間で話し合いを持ち、テレワークを可能とする契約書(覚書)の締結が必要です。派遣先と派遣元と言う2つの会社の合意が成立した後に、派遣会社が自社の社員である派遣社員にテレワークという就労条件の変更を確認する手続きが必要となります。ここまで確認を積み重ねてようやく派遣社員のテレワークが実現します。企業によっては複数の派遣会社から派遣されている派遣社員を受け入れている場合もありますが、かかる場合には、全ての派遣会社ごとにこの手続きを行わなければなりません。

筆者はダメモトとは思いつつも、労働局の派遣窓口にかかる緊急事態の対応として簡便な手続きを検討できないか?と問いただしてみました。想像通り、木で鼻を括る対応でしかありませんでした。法で定める手続きをすべて踏む必要があるとのことです。これでは派遣社員のテレワークなど素早く進むはずはありません。

さらに企業によっては派遣法とは別の事情を抱えているところも珍しくありません。情報セキュリティ上の対応です。在宅という、ともすれば会社の管理の目の行き届かない場所で働くことになるため、情報セキュリティの関係で、在宅勤務者には特別に、機密漏洩等に関する覚書などを別途締結するのはよくある事です。また情報セキュリティの関係や労働安全衛生の観点から、自宅の就労の場所(環境)を企業が確認できる仕組みを取り入れるケースも散見されます。しかしながら、派遣社員は派遣先企業との間で直接の雇用関係にはないため、企業は派遣社員と直接かかる取り扱いを行う事はできません。例えば情報セキュリティの覚書についていえば、まず各企業は派遣会社に対して、在宅勤務者に対する情報セキュリティの覚書で示される事項を派遣会社が派遣社員に守らせることを求める契約書を準備する事になります。要は在宅勤務における情報セキュリティ上の対応は、派遣会社を介して間接的に派遣社員を管理するという事になります。さらには、派遣会社にお願いして同じような覚書を派遣会社と派遣社員との間で締結させ、その写しを企業に提出させるという工夫もありかもしれません。いずれにしろかなり面倒なプロセスとなります。

派遣社員のテレワーク推進は、自社の社員向けのテレワークとは異なり、かくも面倒な事務手続きが必要となります。そう簡単には導入できません。

注:筆者の拠点PMPでは新型コロナウイルスに関し、かなりの頻度でニュースレターを発信しています  https://www.pmp.co.jp/pmpnews/ 是非こちらもご覧ください

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鈴木雅一(すずきまさかず)

代表取締役・特定社会保険労務士ピー・エム・ピー株式会社
慶應大学経済学部を卒業(専攻は経済政策、恩師はカトカンで有名な加藤寛教授)。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入社し、人事企画部門他を経験。その後、米国ケミカル銀行(現JPモルガン・チェース銀行)の日本支店の副社長として銀行と証券人事部門を統括。米国マイクロソフト社の日本法人であるマイクロソフト株式会社の人事部門と総務部門の統括責任者を経て、PMPを創業。外国企業と日本企業双方に、グローバルな視点から人事労務のコンサルティング活動を行っている。