2019
12.23

同一労働同一賃金 行政当局も4月からの対応には困惑か!?

2020年4月から改正パートタイム・有期雇用労働法が施行されます。改正法は労働行政による助言・指導、加えて企業名公表も可能となるため、各社は人事を中心に同一労働同一賃金対応のために、有期雇用の契約社員の処遇全般の見直しをされていることと思います。
改正法施行前に行う作業でもあるため、細かいところまで見直しを進めるにつれて、この対応で良いのか? どう直せば問題とならないのか? どのように説明すれば不合理な取り扱いとはみなされないか? 等々、わからない点が沢山でてきます。
こんな時に頼りになるのが、担当する行政の窓口のはずです。しかしながら、同一労働同一賃金の問い合わせになると、今回は行政の窓口の反応が鈍いように思います。
筆者のファームでも顧問先から同一対応で様々な問い合わせを受け、ファーム内でも必要な議論を繰り返してしっかりと回答していますが、それでも不明な部分は行政窓口にも確認をしています。今回は、期待する回答が返ってきません。回答の典型は、「法の趣旨を踏まえて各社の労使間でよく話し合って解決してください」というもので、やや驚いたのは「厚労省ホームページに掲載している以外についてはお答えできません」と言う趣旨の回答もありました。
筆者は、特定社会保険労務士である事もあり、また長年人事の仕事をしているせいか団体の労務系の委員を務めている事もあり、行政幹部の方々とも意見交換する事が珍しくありません。
先日、「同一労働同一賃金の実際の運営では殆どのケースは行政ではなく司法で結着することになると思います。」「一般論ですが、地裁程度の判例では、高裁以降でひっくり返る事も珍しくありません。」「裁判は各社の個別事情に対する判断ですので、それを受けてどのように一般化して適用するのかと言う問題もあります。」と言うようなことを、“個人的発言”との注釈付きながら、筆者の耳元でささやかれた事がありました。
今回の改正法については、もともと法の完成度と言う観点からは疑問に思っていました。行政窓口も対応に苦労されているような印象を持ちました。筆者に耳打ちされた“個人的見解”を改めて考えると、何となく納得してしまいます。「そんなことでは企業が困る。人事部が困る。」と言う声も聞こえてきてはいますが、こんな事情を現実として受け止めて、各企業の対応の仕方を冷静に検討すべきだと思います。

注:筆者の拠点PMPではニュースレターを発信しています https://www.pmp.co.jp/pmpnews/ 是非こちらもご覧ください

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鈴木雅一(すずきまさかず)

代表取締役・特定社会保険労務士ピー・エム・ピー株式会社
慶應大学経済学部を卒業(専攻は経済政策、恩師はカトカンで有名な加藤寛教授)。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入社し、人事企画部門他を経験。その後、米国ケミカル銀行(現JPモルガン・チェース銀行)の日本支店の副社長として銀行と証券人事部門を統括。米国マイクロソフト社の日本法人であるマイクロソフト株式会社の人事部門と総務部門の統括責任者を経て、PMPを創業。外国企業と日本企業双方に、グローバルな視点から人事労務のコンサルティング活動を行っている。